2011年版
<伊都どうぶつ病院新聞>

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1年を通じて(隔月発行ですが)こちらの「伊都どうぶつ病院新聞」で皆様にさまざまな動物の病気やその予防法などご案内していきたいと思います。

なるべくくだけた文章で皆様にわかりやすいように心がけてはおりますが、不明な点、わかりにくい点などありましたらお気軽に当院までお問い合わせください。

バックナンバーを今号記事下より閲覧できるようにしますので、ご覧ください。


伊都どうぶつ病院新聞 冬号
今回の話題は「腫瘍について」です


これまでさまざまな動物の病気などを取り上げてきましたが、一部の方から「”ガン”の話はないの?」という指摘を受けました。
そういえば、今まで一度も取り上げたことがないような気がします。
というわけで、 「腫瘍」を今回のテーマに取り上げようと思います。
腫瘍といっても範囲がかなり広いため、まずは全般的なお話をします。


         <腫瘍とは???>

腫瘍・ガンという言葉をよく耳にすることがあると思います。
現在の日本人の死因のトップであり、動物の死亡の原因のベスト3に入るほど、とてもメジャーな、しかし罹ってしまい、発見が遅れるとなかなか治療法が見つからない、というやっかいな病気です。
そもそも腫瘍というのは、自分の体の細胞が遺伝子上の変化を起こして異常に増殖することによって生じます。
それが「ガン」と勘違いされている場合もありますが、ガンというのは一般的にその細胞が”転移”(各種臓器にばらまかれそこで増殖するということ)をするかしないか、で「ガン」かそうでないか分けられます。
よって腫瘍の中でも悪いものが「ガン・悪性腫瘍・肉腫」と呼ばれ、悪くないものは「イボ・良性腫瘍・腫」という呼ばれ方をします。
もちろんこれがすべて、というわけでなくまだ分類ができていないものや、白血病のように少しタイプの違うものもあります。

<体にできものができた!>

診察をしているとよく、体にできものができた、乳房が硬くなっているなどの症状で来院される方がいます。
これらがすべて腫瘍というわけではありません。
診察していてよく遭遇するのが、「炎症性のできもの(にきびのようなもの)」、「ヘルニア(デベソのようなもの)」、そして「腫瘍」があります。
ですのでまずは最初の診察のときに、お話を伺いながらそれらのどれに属するのか、というのを診断します。
針生検という、注射針をできものの中に突き刺して、できもののなかの細胞を確認する方法もあります。
そして「腫瘍」と診断されると、次の検査に進みます。
次の検査は、「病理組織検査」といって、腫瘍細胞が「悪性なのか、良性なのか」を判断する検査です。
当院では、腫瘍の一部(あるいは全部)を切除して、専門の先生に顕微鏡で診てもらい診断しています。
このような過程を経て、ようやく確定診断というものが下ります。
腫瘍というのは確定診断がくだらなければ、その後の治療方針を決めることがなかなか難しいものです。また治療が必要な場合、かかる費用や時間、予後(いわゆる余命)などをお話しする上では確定診断が欠かせません。
治療法については以下にまとめてみました。




      <腫瘍の治療法>

「手術・抗がん剤・放射線療法」と、昔も今も腫瘍(特に悪性のもの)の治療法は大きく変わってはいません。
@手術によってまず目に見える腫瘍細胞をすべて切除すること。
A抗がん剤によって、手術で取りきれない腫瘍(細胞)を死滅させること。
B放射線照射によって、腫瘍細胞を死滅させること。
とにかくまずは悪性腫瘍が発見された際には手術が第一選択となります(リンパ腫など血液の腫瘍を除いて)。
良性の腫瘍であったとしても、腫瘍が大きくなることによって、動物の生存、生活に不具合が生じるようなことが想像される場合も手術が選択されます。
ただ、@〜Bですべてがうまくいく、とは言い切れず、また放射線療法などは特殊な施設が必要ですし、抗がん剤治療には多額の費用や副作用が伴う、などさまざまな問題点があるため、これらがすべての答えとならないことのほうが多いようです。
そのようなときには、レーザー治療や減容積治療、サプリメントなどを検討することもあります。
このように腫瘍の治療には、さまざまな要因と選択肢があり、スパッと答えが見つかることのほうが少ないという一面もあります。
また獣医師の考え方や得意分野などによっても治療方針が異なることがあるため、
「セカンドオピニオン」・・・他の獣医師(動物病院)の考え方を聞いてみる。
を行うこともその後の治療を納得して行ううえでも、大切になってくると思われます。
記事に関してあるいは他のことでも、ご不明な点は当院にお尋ねください。
伊都どうぶつ病院
      

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